わかりやすさはいらない?|元塾長が教える、失敗しない個別指導塾の選び方【3】

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こんにちは。
オンラインプロ家庭教師の旅する教育者です。

前回、前々回と失敗しない個別指導塾の選び方について考えてきましたが、今回が最終回です。

「塾の授業がわかりにくいんだけど?」
このようにお子さんに言われたらどうしますか?

塾を変えるために動き出しますか?
それとも、塾長に相談しますか?

塾選びの際に指導がわかりやすいかどうかを大切にする親御さんはたくさんいますが断言します。
実はわかりやすさは個別指導塾においてはあまり関係ありません。

たしかに、集団塾や映像授業など先生1人あたりの接する人数が多くなればなるほど、わかりやすさは大切な要素です。

しかし個別指導塾や家庭教師では違います。

もっと大事なのもの。
それは…ズバリ相性!というお話です。

失敗しない個別指導塾の選び方とは

  1. カリキュラムを我が子にあわせて組んでくれるか【前々回】
  2. 我が子の状況にあわせて必要量を提案してくれるか【前回】
  3. 講師との相性を選べるか【今回】

3.講師との相性を選べるか

わかりやすい授業よりも相性が大事

 
講師との相性というのは親御さんが
思っている以上に大切です。

実際、私が塾で時間割を組む際、
一番頭を悩ませるのが
講師と生徒の相性
です。

「数学の先生嫌いだから、数学嫌い。」
こんなふうに話している子見たことありませんか?

親御さんの要望として多いのは
“わかりやすい先生”ですが、
わかりやすいよりももっと大切なのが“相性”だと私は思っています。

わかりやすい授業
わかりにくい授業
たしかにあるでしょう。

しかし、そんなことより
子どもたちの中にあるのは

好きな先生の授業は聞く
嫌いな先生の授業は聞かない

というシンプルな法則です。

どんなにわかりやすい授業をしていたとしても、
その先生に対して心が開いていなければ言葉は入ってきません。

では、なぜ子どもの口から「あの先生の授業はわかりにくい」という声をよく聞くのでしょう?

それは、子どもながらに思うわけです。

「数学の先生嫌いだから、勉強しないなんて言ったら怒られるだろうな。」

そして出てくる言葉が

「だって、あの先生の授業わかりにくいんだもん。」

ですから、お子さんの「授業がわかりにくい」という言葉を聞いたら
そのまま真に受けずに相性を疑ってみることも大切です。

究極のやる気スイッチとは

教えることを職業にしている教員と
大学生では教え方のスキルに歴然とした差があるのは言うまでもないことです。

なぜならば、教えるという仕事は
やればやるほど上手くなるからです。
(きちんと探究心を持っていれば、ではありますが)

それなのに、なぜ時に
プロの学校の教員より学生の講師のほうがわかりやすいと言われてしまうのでしょうか?

その答えは
教員よりも学生講師のほうが親しみやすい
教員よりも学生講師のほうがわからないことをすぐ聞ける
教員よりも学生講師のほうが話していて楽しいからです。

そして、そうやって講師のことを知れば知るほど
「私も先生みたいになりたい。」という憧れも生まれます。

先生への憧れは究極のやる気スイッチ

です。

人は憧れを抱いたとき
その人に少しでも近づこうと
言葉や行動の変化が自然と起こります。

個別指導塾には集団塾よりもはるかに多い講師が
在籍しています。

集団塾だと自分一人の意見で
先生を変えてもらうことは難しいですよね。

成績が上がるかどうかは
講師との相性はとっても大事。

一番もったいないのは
相性の悪さを我慢すること。

この我慢は
気まずい雰囲気の中で授業をする講師や生徒、
成績が上がらないことを心配する親御さんや塾長、
だれのことを考えても幸せにしてくれません。

もしお子さんが個別指導塾に通っていて相性がいまいちだと感じた場合
講師変更を希望することは有効な手段です。

相性を見極める上での大前提

ただし、ここで気をつけなければいけないことがあります。

それは大前提として、

成績が上がらない理由を
人のせいや環境のせいにする思考を
決して植え付けるようなことはしてはならない

ということです。

なにも教育というのは教科の知識を教えることに留まりません。

なにか問題に直面したときに
どう考え、どう行動するのか
その試行錯誤も大事な教育の一部です。

人として成熟すること
成長を促すこと
人間性を育むこと

どれも大切な教育の目的です。

そのような教育の目的に照らしあわせたとき
人のせい環境のせいにばかりする人間になってほしいでしょうか。

人のせい、環境のせいにするのは簡単です。
かわいい我が子を責めずにすみます。

でも、その一時の関係性のために人のせいや環境のせいにする思考が身についてしまっては大きな損失です。

是非教育に関しては目先の損得より、中長期的な視点を持ってください。

相性がよくないと感じる3つの理由

相性がよくないと感じる理由としては、大きく分けて3つの可能性が考えられます。

1. 嫌いという「感情」
2.「教え方」がわかりにくい
3.「講師」から嫌がらせを受けている

当然ですが、3の場合は
即刻変えましょう。

講師も悪気があるわけではないケースがほとんどです。

例えば、年頃の女の子にとって、頭をなでられるのが嫌なのに
頭をなでられるというのは不快ですよね。(実際にありました…)

こういうケースは即刻変えましょう。

さて、問題は「感情」と「教えた方」の見極めです。

先ほども伝えましたが、子どもの言葉は鵜呑みにできないです。

なぜならば、なんか嫌だという「感情」が理由でも「教え方」のせいにする子どもは少なからずいますし、
それが人のせい環境のせいにする思考を育むことにもつながるからです。

この一時の「感情」が原因なのか「教え方」が原因なのかを
見極めるために以下の5つのステップを実践してみてください。

生徒と講師の相性を見極める5つのステップ

1.理由を聞く

まずは、生徒の声をしっかりヒアリングしてください。
「感情」が原因の子は先生がいかに嫌いかという説明をしてくれるはずです。

「教え方」を主張する子には、一旦そのことは置いておいて、
「先生はどんな先生なの?」
という質問をしてみてください。

その子が先生のことをどう捉えているかがわかります。

2.「どうしたらその先生とよりよい関係を築けそう?」

一旦子どもの理由をしっかりヒアリングしたうえで上記のように
「どうしたらその先生とよりよい関係を築けそう?」と聞いてみてください。

「わかりにくいんだから、いい関係なんて無理だよ。」
と主張する子にも
「社会に出たら気の合わない人とも上手くやらなきゃいけないときもある。」
と伝え、いい成長の機会と捉え
考えさせてみてください。

大切なのは、
親御さんから答えを言わない
お子さんに考えさせる
親御さんはそれまで粘り強く待つ

ということです。

人は大抵自分の中にちゃんと答えを持っています。

3.具体的に実践してみる

2で出てきたアイデアを具体的に実践してみてください。

ここでは上手くいくかどうかよりも、自分の頭で考え、自分で行動してみた
という体験そのものが大切です。

上手く関係が改善できればお子さんにとって
大きな自信になるでしょう。

4.塾長に状況の共有をする

これは、3と同時並行で行ってください。

すぐに変えてほしいというのではなく、状況の説明と親子で話した内容、
これから子どもが意識して実践することを伝えてみてください。

すぐに変えてという親御さんは多いです。

しかし、すぐに変えてと言わないことで塾長が親御さんに対して好印象を持つ可能性は高いです。

ポイントは、
いかに塾長を味方につけ、自分の子どもに目を向けさせるかです。

100人、200人生徒がいたら全員に目を配ることは正直難しいです。

また、塾長に意識させるという点では
「先生から見てうちの子と講師の相性はどうですか?」
と聞いてみるのもいいと思います。

5.それでもダメなら変更を願い出る

ここまでやってダメなら相性の問題です。
遠慮無く願いでてみてください。

ここまでの行動をしている親御さんは普通の親御さんとは一線を画していますから
塾長は最優先で動くことが多いと思います。

そして、自分の感覚的には
力のある講師を担当にする可能性が高いです。

ここまでやるのはめんどくさいと思われるかもしれませんが
短期的な視点と中長期的な視点を
併せ持ってお子さんの成長を見守ってみてくださいね。

いかがでしたか?

我が子にあわせた完全オーダーメイドカリキュラム
×
それに合わせた科目と週回数の設定
×
講師との相性

以上が合わされば、成績の上がる環境は整います。

親御さんにできるのはある意味ここまでかもしれません。

あとはいかにお子さんが授業で学んだことを定着するまで
家で繰り返し勉強できるかどうかです。
(参考:【前編】成績アップはたった2つの方程式で導ける
【後編】成績アップはたった2つの方程式で導ける

スポーツも勉強も根本は変わりません。
教わっただけではダメなのです。

野球少年がイチローに教わったら
すぐにヒットが打てるようになるかといえば答えはNOです。

教わったことを自分の身に付けるまで繰り返し練習する必要がありますよね。

勉強サービスの面白さは
サービスの受け手も努力が必要だということです。

出来うる限り最善の環境を整えることは大事です。

しかしそれは全てではありません。

どれが正解かと探し求め
塾難民のようにならないようには要注意です。

世の中に正解はなく
自分が決めたその道を自分の力で正解に変えていく

こういう視点も併せ持ちながら塾選びをしてみてください。

大切なお子さんの塾選びに少しでもお役に立てれば幸いです。

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旅する教育者代表「木村 公紀」

旅する教育者代表「木村 公紀」

マニラ日本人学校卒業後、私立桐朋高校に進学。帰国子女入試と一般入試の両方を経験する。その後慶應義塾大学法学部政治学科に進学。大学時代は4年間集団塾講師のアルバイトを続ける。新卒で人材教育の会社に就職後、2社目の会社で個別指導塾の塾長を経験。社内最速昇進記録を持つ。配属された校舎を毎年120名以上の生徒を集める人気校にしたのち、生徒一人ひとりと向き合い「できない」を「できる」に変える教育をしたいという志のもと独立。旅する教育者の代表を務める。
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